透き通るような秋晴れの2019年10月6日。109シネマズ名古屋において公開記念舞台挨拶が行われた。雨宮慶太監督、冴島雷牙役・中山麻聖さんが揃って登壇。そして同会場のMCは、名古屋を拠点に活動するBOYS AND MENより勇翔(ゆうひ)さんが務めた。
舞台挨拶終了後、雨宮慶太監督、中山麻聖さん、勇翔さんの3ショットインタビューのお時間をいただき、原作者、主演俳優、そして作品をこよなく愛する者として。三者三様の視点から「牙狼」という作品について、そして本作の見どころについてお話を伺った。
―よろしくお願いいたします。実は昨日、東京の方で見させていただきまして。本日は名古屋へ伺いました。
中山麻聖さん(以下、中山) ありがとうございます。昨日に引き続きよろしくお願いします。
―今回の作品の中でようやく、三世代の魔戒騎士が揃うという事ですが、「家族の継承」という部分で演じる上で、あるいは今回の脚本を書かれる上で思ったことはあったのでしょうか
中山 家族の継承
―はい
中山 撮影時はあまり難しいことは考えずにやらせていただいていたというのが正直なところで。最初は父を探すという事があって、その最中で事件が起こり、作品の結末に至るわけですけど、自分の中で一番心が動いたのが、ようやく親子の会話が出来た瞬間で。「あ、家族だ」というのをじんわり、じんわりと感じるものがあって。それはすごく自分の中で感慨深いものがありましたね。
―今まで演じられてきた、実際の時間の流れもあって
中山 そうですね。冴島雷牙と共に過ごしてきた時間もそうですし、僕自身が歴代の牙狼シリーズを見続けてきたので、ひとつの目的に至ったというところでは、心が動かずにはいられなかったです。
―そこは想いをこめて演じられたと
中山 「こめた」というよりも「こもってしまった」というのが正しいかもしれないです。会えた喜びに感極まる部分というのはどうしてもあって。でも、ここは涙を流すようなところではないと理解はしているので、自分の中でちょっとした葛藤がありました。物語が進む中で冴島雷牙としてどうあるべきなのか考えていましたが、「演じる」というよりは「言葉や感情が自分の中からこぼれてしまう」。意識して自分から出そうとしたものはなかったですね。
―監督は今回シナリオをお書きになる上でどういった想いがありましたか
雨宮慶太監督(以下、雨宮) お話というよりは、世の中に存在しているといわれているけども形は見えない絆や愛。それをどうやって物語として描くかということをずっと考えていて。それが言葉やシチュエーションに落ちれば物語が作れるけども、今回のテーマとして、親子が三世代出てくるというのがあり、継承というか絆というか、【同じ時間を共有していないのに遺伝子的に入っている】ということ。親が子に言葉で教える、態度で示した、ということを描いちゃうと身も蓋もない。
どういうことかというと、冴島雷牙を主軸とした冴島の人たちというのは、黄金騎士牙狼で鎧を使って戦うけど、鎧に固執はしてない。大事なのは「騎士の魂」で、鎧というのは一番大事なものではない。それに対して今回の敵方というのは「鎧が全て」なんですよね。最強の鎧を手に入れて、究極の存在になりたいという、鎧に固執した物体というか意思。それが鎧に固執しない、鎧が無くても自分たちは騎士であるという気持ちを持った人たちがぶつかるからこそ燃えるんでしょうね。
だから最後並ぶところでぐっとくると聞いているけど、僕は鎧がない三世代が突っ込んでいくところが一番グッとくる。「こいつら鎧が無くても戦うんだ」というところを描いているので、そこのぶつかり合いを物語に落せたらあとは自分が伝えたいことを文章化できる。こうして人に説明できるまで落とし込む作業が最初にあって、あとはもうそれを書くだけなんで。そこまでが一番時間がかかるし難しい。20年ぐらいかかるかな(一同笑い)
―では、今回は満足のいくものが出来上がったと
雨宮 今回は満足度高いですね。直したいところはいっぱいあるけど、一番好きなんじゃないかな
―ありがとうございます。勇翔さんは作品にご出演されているわけではないですが、ご覧になった上で感じられたことはありますか?
勇翔さん(以下、勇翔) 今まで親子の関係というのがしっかりは描かれてなかったんですけど、今作でその辺のことが一致したというところと、親から子に対する想いというのもありますし、さっき監督がおっしゃっていた「同じ気持ちをもって生まれている」というところ。みんなキャラクターは違えど同じ部分を持っていて…結構僕の中ではそれを支えるゴンザの存在も大事なところで。三世代にずっと仕えて、共通しているというのはやはりゴンザがいたからというのもあると思っています。
―ずっと見ていたのはゴンザさんですもんね
勇翔 そうですね。あとは、苦難があったとしても子に引き継いで、想いを継続させていくという部分にも僕は感動しました。『魔戒ノ花』の時に、雷牙が試練を越えてもまだ先代の鋼牙が鎧を所有しているから渡せない、引き継げないというところで、まだ鋼牙は生きていてどこかで戦っている。でも、子にその時期が来たら鎧を引き継がせるという部分は、さっき監督もおっしゃっていましたが、鎧に固執しない、気持ちがどうあるべきかということを感じられて感動しますね。
雨宮 見返すとそこはずーっと変わってないからね。『MAKAISENKI』の時も「大事なのは鎧じゃない騎士の魂だ」と。そこの価値観はブレない。冴島の人たちはそういう人たちなので三世代で同じ価値観…なんだこいつら
一同笑い
雨宮 【価値観が一緒】というのは実は裏テーマで。そこに響いているはずなんだよね。アクションで泣けちゃうって人たちはそこが大きい気がするんだよね。
中山 そうですね
雨宮 肘井(*冴島カオル役 肘井美佳さん)がそこ見抜いたんだよ
中山 あー!そうなんですね
雨宮 「肘井が一番泣いたシーンってどこ?」ってきいたら、『やっぱり3人で突っ込むところ』って。『この人たちは鎧が無くても突っ込んでいくんだって思うとすごく泣けた』と。肘井はよくわかってんな。
―ありがとうございます。それではお2人に質問なのですが、演じる上で、あるいは作品のファンとして、ハマったきっかけや、ここが自分に刺さったというものは何でしょうか
勇翔 それはシリーズを見ていてということですか?
―はい
中山 (ハマったきっかけは)僕は、藤田玲(*涼邑零役)くんがきっかけです。彼は高校の同級生で、クラスメートが出ている作品をいろいろ見ていた中、彼が出演していた牙狼という作品は深夜だったんですけどすごく引き込まれるものがあって。学校で会うたびに「昨日のあれみたよ!」って話をしていましたね。
―藤田さんが出演されているのを見て、そこからご自身もがっちりハマっていったと
中山 そうですね。以来ずっと見続けていたので、『魔戒ノ花』のオーディションを受ける時に改めて全て見返したり、ちょうど『蒼哭の魔竜』が公開されていた時期でもあったので劇場に見に行ったりしていました。
―ありがとうございます。では、勇翔さんは
勇翔 僕は…小学校からという話になるんですけど。昔から特撮が好きで、小学校の時にリアルタイムに大好きで見ていた作品が『鉄甲機ミカヅキ』。そのあと、高校で牙狼にハマって監督が誰なのか調べてみたら、雨宮監督で。物心つく前からといいますか、存在を認識する前から自分の中の何かが雨宮監督の作品に反応していたんだなと感じました。
―ではそのあとも、ずっと雨宮監督の名前を意識して作品もご覧になったり?
勇翔 そうですね。牙狼ではないですけどゴウライガン(*衝撃ゴウライガン!!)とかも見ていました。いつか自分が雨宮監督の作品に出たいというのはずっとありますね。
―当然、牙狼はその中でも第1目標に?
勇翔 はい。あの、先ほど『蒼哭の魔竜』の話がありましたが、僕ちょうどこの劇場で見ていました。
中山 この劇場で!?
勇翔 はい。ここでした。
―そんな思い出の劇場で今回新作の舞台挨拶MCとしてお立ちになったという意味ではひと際思うところがご自分の中であったのでしょうか?
勇翔 思い出の劇場…僕もいろいろ出演させていただいて、こちらで舞台挨拶をさせていただいていますけど、MCという立場は今回が初めてなので。初めてやらせていただくのが、ずっと好きな牙狼というのはすごく嬉しいですね。今まで作品に関わってこなかったので、こうした形で牙狼に関われたというのが僕の中では結構大きいです。
―じゃあMCのオファーがあった時も…
勇翔 そうですね、「よっし!!」って。(一同笑い)これが第1歩目といいますか、中山さんが、『こういう場で言ったことは結構実現するよ』とおっしゃっていて。今後も関わっていくためには、もっとアピールしていかなきゃなと。
―ありがとうございます。ではお時間もきてしまいましたので、最後に舞台挨拶等でまだ伝えていない見どころなどありましたらお願いいたします。
中山 1シーン1シーンたくさんのこだわりが詰まっている作品になっているので、昔から継承されている牙狼の世界観や、鋼牙の世界観、雷牙の世界観。それぞれ違うと思うんですけど、それが合わさった時に新たな世界観が生まれてくるんじゃないかなと思いますし、バトルシーンや、列車の中の装飾ひとつとってもいろんな楽しみ方ができると思うので、ぜひ何度も見ていただいて、『ここ見つけた?』『まだ見つけてない!』というやりとりをたくさんの方としていただいて、いろんなところに気づいていただけたらと思いますね。
勇翔 今回は親世代からライバル関係だった敵と、子の世代になっても戦うというところで、親子が揃ったからこそ改めて決着をつける、というところも見どころと思いますね。
雨宮 言ってないところでいうと、音楽の使い方。牙狼は14年の歴史があるんだけど、今まで使ってきた印象的な曲はほとんど使っていなかったのを、今回あえて今まで使った曲をBGMにと試行錯誤してみたり、エンディングの歌はJAM projectに特別に作ってもらって。音楽の使い方や当て方を気にして2回目以降も見てもらえたらいいなと思います。
―雨宮監督、中山さん、勇翔さん、本日はありがとうございました。
(聞き手 藤渡和聡)
<取材後記>
特撮ネットワークをご覧の皆様。お初にお目にかかります。Haruna.と申します。
ご縁をいただき、『牙狼〈GARO〉―月虹の旅人―』舞台挨拶@109シネマズ名古屋の記事を執筆いたしました。
牙狼シリーズの最新作である本作は、『魔戒ノ花』から、いや、それ以前から続く冴島家の総決算的作品です。
舞台挨拶で雨宮慶太監督、中山麻聖さんのお二方がおっしゃっていたように、当初の予定より時間がかかってしまった事、また、かかった時間の間に新たに生み出された要素もたくさんあり、これまでを噛みしめながら見ていると心に染みて涙が零れる。そんな場面が人の数だけあると思います。
取材終了後に中山さんと少しお話した際、「シリーズを長年愛してくださっているから見つけられることや、逆に初めて見るからこそ気づく事がそれぞれたくさんあると思います。」とおっしゃっていたのが印象的でした。私の友人や知り合いには、長年見ている人、本作公開をきっかけに初めて牙狼というシリーズに触れた人の両方おり、『作品を楽しむ』ことを愛した期間ではからず万人を受け入れ、全てを楽しませるといった製作陣の心意気を感じずにはいられませんでした。
また、雨宮監督が本作に込めた【想い】や10年以上愛され続けるシリーズを貫く信念を伺い、改めて牙狼が持つ世界観と凄味を感じました。先行上映の際にも、そして今回は上映前の舞台挨拶ということもあり、ネタバレになりそうな要素には特に注意して、足を運んでくださったお客様がより新鮮な気持ちで作品を見られるようにと徹底的に心を尽くされている。また、楽しみを奪わないように、ともおっしゃっていました。そんな想いに触れ、記事についてもなるべくネタバレになる要素はカットして執筆に取り組みました。
そしてもう1つ。今回の舞台挨拶MCとして、かねてより牙狼シリーズのファンを自認する勇翔さんが登壇されると聞き、東京を飛び出し、名古屋へとやってきました。BOYS AND MENの一員として名古屋を拠点に活動されており、ご自身の熱い牙狼愛・特撮愛は聞き及んでいたものの、これまでお話を伺う機会がなかったことから、今回は雨宮慶太監督と中山麻聖さんと共にファンのならではの切り口や牙狼に対する熱い気持ちをたっぷりと伺うことが出来ました。私物の魔導輪・ザルバを身に着けず舞台挨拶のMCに臨んだ勇翔さんの話は以前、特撮ネットワークジャパン公式ツイッターで紹介しましたが、その理由を聞いた中山さんが感心しながら、「昨日(*10/5の東京舞台挨拶)は4体いたけどね。」と冗談で談笑するシーンもあり、非常に和やかな雰囲気での取材となりました。
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